2022/10/03

また気づいたら寝落ちしていた。いまだ明かりを消して寝ていない。当然、睡眠の質は悪く、頭も体もぼんやりとしていて、国外に出てこんなにだらだらとする怠慢も悪くないのかもなあ、などど阿呆なことが頭に浮かんできたと思ったら10時半くらいになっていた。11時過ぎに大学に行く。手続きだけすればいいかと思って所定の事務室まで行くと、ずいぶん妙な顔をされる。とっくに授業は始まっているのに、何を平然とこんな時間に来ているのか、という表情だ。何も勝手に想像したわけではなく、まずは授業を受けなさい、手続きはそれからだと言われたからで、まあ知ってはいたんだけど授業のサボり癖がすっかりついていて(よくない)、中高と皆勤賞だった自分からずいぶんと遠くに来てしまったなと常々思う。それが良いのか悪いのかは状況次第で、サボり癖も完璧主義の悪い作用から自己を守るために身につけたステータスだと思うことにしている。教室に入るとモンゴル人が2人、あとオンラインで台湾人が1人。日本人もいるらしいが、どうやら同室の人のようである。

それから大学の手続き、 レギストラーツィア、口座開設などなど、いろいろ事務処理をこなしてすっかり精神がやられる。ちなみにレギストラーツィアは手持ちの書類が不足していてやり直しとなった。やってられないと思って書店併設のカフェでひとやすみしていると、中国語をやっているという同世代の女性に話しかけられる。日本語だよね、わたしは中国語なんだけど……ああそうなんだ、一昨日こっちに来たばかりで、と言うとかなり驚かれる。デザイナーをしているらしく、それなりにスケジュールに自由のきく仕事で、いまは中国語の試験のために勉強しているのだそうだ。

帰り道は冷たい雨が降っている。思えば到着してからずっと晴れか曇りで、それほど体感は寒くなかったのだが、とても冷え込んでいて身体の芯にくる寒さだ。仄聞するところによると、同じ気温でもモスクワよりもサンクトペテルブルグの方が寒く感じるらしく、それは湿度が高いからだという。これから雨が雪になって、ますます耐寒の日々を過ごすことになるのだろう。帰寮すると同室人が戻ってきていた。人当たりの良い人で安心した。大ざっぱに部屋の使い方を決める。こういうのは雑な方が良いというのが信条である。面倒くさがりともいう。一人暮らしも10年近くで、こんなふうに生活空間に他人がいるというのはどうにも新鮮で、一抹の不安がないわけではない。ましてや慣れない土地でうまくいくのだろうか。不慣れだからこそ団結するものだろうか。とまれ母語が同じで意思疎通がスムーズなのは生活上のメリットが大きいと思う。

キッチン備え付けのテレビを適当にザッピングしていると、キャットファイト的な番組を見つける。筋骨隆々のアジア系女性が二人、いかにもな闘技場で取っ組みあいになっている。すごい番組だ。スポーツと銘打ってはいるものの、相当に性的なコンテンツではないか。いや、そもそも格闘技ほど性と結びついているスポーツはなく、よく考えたら、公共放送で夕方にほぼ全裸の巨漢が肌をぶつけあう様子を国技だとして放送している方がすごいことのように思える。はじめて電気をちゃんと消して、彼と同じ時間に眠る。