2022/10/08

土曜日、すっかり疲れが溜まっているようだが、今日は市中で定期的に有志が開いている映画クラブ(?)の上映に行く予定だ。その前に急きょの仕事でカフェに入る。SIMカードを買って、電話番号の変更をiMessageだかFaceTimeだかが認識すると、iPhoneMacの連携がうまくいかなくなるらしくデザリングができなくなってしまったので、Wi-Fiを求めてカフェを探したのだった。あとは無制限のWi-Fiルーター用のSIMカードが手に入れば、寮で好きなだけ映画を観ることができる。VPNを通さなくてもAmazonプライムやU-NEXT、MUBIなどのサイトにはアクセスできる。ところで、いまiPhoneでつかっているБилайнのサービスには、YouTubeApple Music、OK RUなどはトラフィック量として計上されないというありがたいオプションが入っている。

さて、くだんの映画クラブであるART LAIRに行く。ちょっと奥まったところにあって、入ってみるとあまり人もいない。主催者とその身内のような人が3人いるだけで、大丈夫かなとちょっと思ったけど、話しかけてみると歓迎してくれる。ふだんは10人近くのお客さんがいるようだけど、今日は少なめ、4人で『もののけ姫』をロシア語字幕で観る。上映前に、女性が作品についての前口上をやってくれる。自然と文明、森の動物たちと人間の作為との複雑な関係を描いている云々。いや実際にはもう少し込み入ったことを言っていたはずだけど、恥ずかしながらちゃんと聞き取れずで、すでに自分が知っている情報を少し拾えただけだ。上映後に主催者らしき男性と感想を話す。この作品もそうだけど、ジブリ映画は男女関係の描き方が面白いよね、みたいなことを伝えたら、たしかにそうだね、暗喩的だМетафорический、と返してくれて、別になんてことはないのだがそのロシア語の響きにちょっと感動した。

次はヒッチコックレベッカ』の上映だ。上映前の休憩時間に、お前はヒッチコックなら何が好きだと問われて、そうだなあ、『ロープ』かな、と答えたら、ショットкадровの繋ぎ目を隠したサスペンスだね、とさすが知っている様子で、これまたкадрという文献でよく読んでいた単語に出会って感動する。

そこにペテルブルグ大学の修士課程だという男がやってきて、おお日本人か、日本映画なら誰だと言われて、知っているかと挑戦する気持ちで若松孝二だと返すと、なんと知っていたようで大興奮で話してくれる。ただの映画好きだと自称する彼の口からは、深作欣二の作品が大好きだ、日本とロシアといえば黒澤明の『デルス・ウザーラ』だよね、増村保造の『からっ風野郎』の三島由紀夫はとてもかっこいい、菅原文太は最高の俳優だよ、と立て板に水の勢いで矢継ぎ早に日本映画についての語りが飛び出す。はては五所平之助の名前が出て、いや僕も観たことないよ、と降参する。圧倒的だ。そんな彼の専門はフランスのポストモダニズムで、フーコーについて研究しているらしい。こうした人たちとロシア語でちゃんと議論ができたなら……しかしなんと良い場があるものだろう、上映会場もこじんまりとしているが洒落ていて、座席も良い。スクリーンも大きい。壁が薄いのかあまりにも大音量なのか、近所のクラブかなにかの音が聞こえてくるのは少し残念だが、音響も悪くない。