2022/10/13

ずぼらな自分としては珍しく毎日続いていた日記だったけど、ついに昨日ぽっかり穴があいてしまった。すでにもう何があったかうろ覚えなので、適当なことを書くよりも書かないままにしておこうと思う。めんどくさいだけともいう。

そんな昨日の夜は同室の人とビールと白ワインを飲み干して、絶対に明日は早起きしないぞという強い誓いを胸に眠ったのだったが、なんだかんだで8時ごろに目が覚めてしまう。目覚めも悪くはない。しかし今日は絶対に休むのだと強く思い直して二度寝する。はじめて自主的に授業をサボった。なんて清々しいのだろうか。正午ごろに寮を出て、メトロでСадоваяに行く。行きたいなと思っていたギャラリーの最寄りだったからなんだけど、あんまりにも良い天気で散歩したくなり、その足でЮсуповский садという公園に行く。授業をサボって公園で日向ぼっこだなんて贅沢にすぎる。公園には湖があり、詳しくは見分けられないが、アヒルの類とスズメのような鳥と鳩が飛びかっていて、平和なものだとすっかり幸せな気分になった。あと野良猫もいた。

だらけてばかりもいられないのでカフェに向かう。Mad Espresso Teamという店名の、とても洒落たところだ。店員さんも可愛らしいひとばかり。金銭的な余裕はまったくないのだが、居心地の良い綺麗なカフェが点在しているのはこの町の良いところだ。コーヒー1杯なら150ルーブル程度なので、そこまで高いわけでもない。授業の予習復習と、タルコフスキー関連の研究書を読む。東ドイツで『ストーカー』がはじめて上映されたのが1981年5月1日だったこと、東ドイツではソ連映画プロパガンダに利用されていたという理由で„Russenfilme“というジャーゴンで呼ばれていたこと、でも実際はソ連映画の観客は多く、SFジャンルも人気だったことから『惑星ソラリス』も『ストーカー』も人を集めたらしいことを知った。あと、1983年のテルライド映画祭にタルコフスキーを招いたのはなんとスタン・ブラッケージだったらしい。しかもブラッケージは自身のテクストでタルコフスキーを大絶賛していた。

本を読むのに疲れたのでカフェのWi-Fiをつかって、MUBIでロズニツァの2020年制作の短編『A NIGHT AT THE OPERA』を観る。1950、60年代のパリのオペラ公演を撮影したフッテージを再編集した作品で、マリア・カラスのとんでもない迫力の歌声が印象に残った。優雅に歩く豪奢なブルジョアと、ぎゅうぎゅうに客席につまる一般庶民らしい群衆との対比が特徴なのかな。20分ほどの作品を観終えて、もう夕方だ、カフェの店員に長居してごめんねと軽口で会話をしかけてみたら、いやなんも気にすることないよ ничего не страшно と笑ってくれたので良かった。

帰りしなにソ連的な雰囲気を食堂に立ち寄ってсолянкаというスープを頼む。肉も魚も野菜も全部入りのスープで、調べてみるとボルシチとシーの合いの子として考案されたらしい。結局ギャラリーには行かずに帰寮する。