2022/10/15

日本語がずいぶんと流暢なロシア人にアテンドされてГатчинаという町に行く。彼の生まれ故郷とのことだ。ペテルブルグの中心から電車に乗って1時間くらいのところにある。車窓から見える風景、ちょっと中心を離れると田舎だよねと言ったら、モスクワとペテルブルグ以外のロシアはどこもこんな感じだよと笑っていた。この町にはガッチナ宮殿というまあまあでかい宮殿と、かなり大きな庭園がある。広々とした庭園を歩き回って、これまた巨大な湖を見て、ロシアの土地の規模の大きさにちょっと圧倒される。白樺の木がたくさん生えていて、これが白樺か……とアホみたいな感想が思い浮かぶ。белкаはリスという意味のほか、酒に酔い潰れて前後不覚になっている人を指すこともできるということを、どんな脈絡かは忘れたが教えてもらう。庭園を外れると広めの車道にぶちあたり、なんだか南大沢みたいな感じだなと頭が勝手に連想する。よくよく見ればずいぶん違うのだけど、おおまかに似ているところがあるのも確かなような気がする。詳細をはぶいておおざっぱに類似を捉えてしまうのは不思議な能力だ。たぶん写真とかで見て、南大沢とГатчинаが似ているなと思わなかったのではないか。いずれもの町、景色の中を歩いたことがあったから、そういう振る舞いのうちに類似を見たということなのだと思う。耳のそばを通り過ぎる車両の走行音とか、風の強さやちょっと薄暗い曇り空の感じとか、規則的に並ぶ街灯の影とか、そういうものも合わさっての類似性の感覚なのだと思う。18世紀、19世紀の環境としての宮殿と庭園を歩いたあと、自動車がすぐそばを走行するコンクリートの車道のうえを歩くという20世紀、21世紀的な歩行へと、わたしの身体はおよそ3世紀ぶんくらいの時間を振る舞いにおいてタイムスリップした……とかなんとか。