2022/10/01

ネット環境が整わなかったり疲労と怠惰にかまけたりして、まとめて三日分の記事を投稿することになる。

さかのぼって10月1日の今日は、羽田空港から国際便で出発する。夜の出発便。最後に日本で何を食べようかなと思い、あまり期待せずに豚骨ラーメン(全部のせ)を食べる。けっこう美味しい。この妙に鼻につく臭いもとうぶん嗅ぐことはないのだろう。

ゲートで押されるはずの出国スタンプが廃止されていた。最後に国際線に乗ったのは4年半前だったけど、そのときはあったような、と思ってパスポートを見返すと帰国時は捺してあったけど出発のものはなかった。電子化と接触機会を減らすのもいいけど、もし完全に廃止されたらスタンプラリー好きとしては少し寂しい。税関のチェックは思っていたよりもスムーズで拍子抜けする。預け入れ荷物が1kgくらい超過していて、急いでいくつかの本をもう一つの荷物に移す。内心慌ててしまっていて、南京錠をかけるのを忘れる。

トランジット先のイスタンブールまでの便には、何かしらの日本代表に囲まれる。JAPANジャージとスーツ姿の体育会系の集団だ。なんだろうと思っていたら、ジャージのロゴにJUDOの文字を確認する。世界大会があるのか。夕食も朝食も、フィッシュ or ビーフではなく洋食か和食か、と訊かれる。夕食は、和食で、と返して配膳された牛肉に、財布に忍ばせていた松屋の七味唐辛子をかける。

『そしてバトンが渡された』を観る。とてつもないエコノミックな編集で、時系列バラバラに家族の物語をつなぐ。ミスリードを誘う意図があるような感じもするけど、ほぼ混乱することはない。回想なしで過去と現在を見せていく。すでに似た手法を使った映画は多々あるだろうだけど思いつかない。それと、俳優の演出がひどい(邦画あるある)。ハキハキと自分の気持ちを観客に向かって語る、古典演劇みたいな台詞回しとカメラワーク。舞台上でリア王が大立ち回りで死んでいくようには映画の中では死ねないんじゃないか。邦画あるあるその2、照明がぼんやりと淡く、ポートレート的なフォーカスで撮る。日本のロケ地が限られていて、細部が鮮明だとつながりがうまくいかないための工夫だとどこかで聞いたことがある。あと、みんな良い人として描かれていた。同じ女を回したホモソーシャルな友情のなかで、娘というバトンが次の男に渡る。そうして村の平和は守られたとさ、めでたし。飛行機の中でしっかり7時間くらい眠る。映画5本くらい観ようと意気込んでたけど、寝られるならそれで良い。

イスタンブールでのトランジット。右足薬指が痛い。靴擦れかとビビっていたけど、靴下の中でほつれた糸がきつく締め付けていただけだった。いやでもどうやってこんなに巻きついたのだろう。乗り換え時にPCRの陰性証明書はあるか訊かれた。PCRが聞き取れず、3回くらい聞き直してようやくわかる。恥ずかしい。近くに関根勤みたいな顔のロシア人を見かける。サンクトペテルブルグ行きの飛行機には日本語のわかる添乗員さんがいた。勉強を始めて2年くらいらしい。すごいうまい。おたがい日本語で別れを告げる。もう会うことはないだろうけど、どうか元気でいてほしい。人間の親切心と優しさなんて単純なものだ。